いつか見たけしき

滋賀の片田舎を、所用あって歩いていた。

駅に程近い路地にある、ふるい玩具屋が目に入る。
いまだにプラモデルを並べて売っているような、木造引き戸のたたずまいである。
戸は閉てきったままに、店の前にある、ブリキ製の「おもちゃ」という立て看板のみが見えた。
いずれ商売がえでもするのだろうか、と通り過ぎなんとするとき、薄暗い店内の中、腰をかがめたおばさんの姿が見える。
店内をすかし見ると、ロボットなどの玩具もあたらしく、在庫を片づけているようすだった。
商い中かと思いや、戸のガラスには「当店はインターネット通販のみ」と貼り紙がしてあることに気づく。
ご近所相手ではいつまでも売れなかった不良在庫が、実はプレミアムがつくのだと気づいたものだろうか。

こちらに背を向けた店主ともども、あたりを拒んでいるように見えはじめる。
なんとはなし、申し訳なさもおぼえながら、足早に通り過ぎた。
(2008/7/26 編集)