或いは情無用のジャンゴ

そんな発想があったのか、と驚かされることは、無上に楽しい。
自分が驚かせることができれば、これも然り。

ずいぶん前、北野誠がなにかの番組で、雑誌の中吊り広告に茶々を入れていた。
うち、女性ファッション誌の見出し「毛穴ゼロで愛され肌」に目をつけ、毛穴がなくなったら皮膚呼吸できないだろう、と物言いをつけて笑いをとっていたのをおぼえている。
女性向けの媒体では、毛穴はなにかと毛嫌いされる。化粧の仕方や手入れの結果として、毛穴が見えなくなるくらいに仕上がったものが良いものとされている。
何人かに尋ねて確かめると、生気がない肌よりも生っぽさ、自然さがいいだろう、ということらしかった。
用語以前に「良い」とされているものが、そもそもちがうようだ。

よく足を運んだ京都の洋食屋は、注文してから出てくるまでにひまがかかった。
置いてある雑誌の中から、女性誌をえらんで持ってくる。この記事の意図するところは予想がつくか、とあてもののようなことを、よくしていた。
見開きの写真、草地に停められた車の脇にモデルが立ち、コピーは「バーベキューで差がつく、カラフルなクロップトパンツ」とのみある。
連れは、いったい何と何で差がつくものかわからないと言う。
バーベキューではみな、汚れてもよい格好をしてくる。その中で目立とうとスカートを着てくるのは場ちがいだから、せめて、きれいな色で他の参加者から目立とうということ。
差をつけたい相手は同性で、目に留まりたい相手は異性だとして、グループデートという設定は、思い切りよく省かれている。あらかじめ察しがつくかつかないか、おおきな溝があるようだった。

また違うときに見た雑誌の「新郎の職業でえらぶ、招かれドレス」という見出しには、しばらく考え込んだ。
新郎の職業と、新婦の友人で招かれる自分とでは、何の関係があるだろう。
記事の内容をながめて、ようやくわかった。
結婚式によばれて、二次会は合コンに似た場になると聞いたことがある。くだんの女性誌は、職業や業界別の好みを探求するに熱心である。新郎が招く同性の友人は、しぜん、同業界が多くなるだろう。
はじめから二次会にねらいをさだめた、逆算思考だということに感心した次第。
(2008/11/10 編集)