二十歳で卒業したかったこと

酒でも煙草でもなく。

飲んだり食ったりする店の前に鎮座している、料理見本がむきだしで置いてあるのを見ると、つい指でつついてしまう欲求をどうにかしたい。
よくできているな、どういうこしらえかたをされているものか、思うまもなく、手がのびている。
少しふるめかしい店だと、原料の差もあろうか、指をおしもどす柔らかさがあったりする。冷たさと固さで応じられると、すこしがっかりする。
そのくらいならまだしも、おしゃれカフェだと、本物がならべられていることがままある。
くるくる変わるおすすめの品を、いちいちサンプル製作にまわしたりしないだろう道理は、たいていの場合、遅まきにやってくる。
あとに残るのは、この指をどうしてくれようといういたたまれなさと、見本をそこなってしまった申し訳なさのみ。

気に入りの食品サンプルでも買っておいて、思う存分さわっていたら解消されるものだろうか。
そういうものでもないような気もする。